社労士が参入!退職拒否に対抗するには代行サービスを使うしかない?

令和の時代に入ってから、退職代行サービスの話題は一向に途切れませんよね?

辛いことは他人に任せてしまうこの代行というサービスは、昭和の時代から様々な形で存在してきました。

特に、運転代行や電話取次代行、卒業論文代行や墓の掃除代行は人気が絶えない代行サービスのひとつです。

5年ほど前から現れ始めた退職代行も、しばしば「違法なんじゃないのか?」という議論が交わされてきました。

今後、退職代行がスタンダードとなって法律が整備される可能性はありますが、退職の意向を伝えるだけであれば今のところなんの問題はありません。

あるIT企業の総務部長は、突然かかってきた電話をとって耳を疑った。それは退職代行会社からの連絡で、同社で働く2人のエンジニアに代わり、彼らの退職希望を会社に伝える内容だった。途方に暮れた総務部長は事態収拾に動いたが……。(社会保険労務士 木村政美)

<甲社概要>
従業員数100名のIT企業。業務受注量が増加する一方、新規社員や退職社員の補充ができず、社員は長時間残業や休日出勤を強いられている。
<登場人物>
A:24歳。大学卒業後入社2年目のエンジニア。
B:28歳。エンジニア。Aの先輩で同じチームに所属。Aの入社時に指導係を務め、仲が良い。
C:32歳。A、B他メンバー8人が所属するチームのトップ。
D:Aの大学時代の友人。
E:総務部長。45歳。
F:甲社の顧問社労士。

「急な話ですが、当チームは現在開発中のプロジェクトに加え、今日から新たなプロジェクトも担当することになりました」

「えーっ……」

9月中旬の月曜日。朝礼でのCチーム長の発言に、一同は絶句した。自席に戻ったBは、顔を紅潮させ怒りを露わにした。

「今でさえ毎日夜の11時を過ぎないと帰れないのに、新たなプロジェクトもやれってか!」

この忙しいときに会社を 辞めたいなんて、バカか!

隣にいたAもウンザリした顔で答えた。

「今日から毎日徹夜かも。俺、そのうちに倒れちゃいますよ」

先月退職した3名の補充ができないのに、新規の仕事を受注する会社のやり方には全員が辟易していた。

それから1週間後のこと。AとBは新プロジェクトの業務分担について打ち合わせをしていた。ひと段落したとき、BがAに顔を近づけ小声で囁いた。

「実は10月いっぱいで会社を辞めようと思う」

「えっ?」

Aは驚き、とっさに質問した。

「辞めた後はどうするんですか?」

「乙社に転職する。社長とは以前からの知り合いで『俺の会社来いよ』と誘われたんだ」

「それで、Cチーム長には話したんですか?」

「ああ。昨日『10月末で退職したい』と言ったら、『この忙しいときにバカか!』ってキレられた」

「そうなんですか……」

Aは強いショックを受けた。仕事が多忙でも頼りがいのあるBが一緒にいたから続けることができた。しかしBが退職したら、ますます仕事の負担が増えるし、第一やる気が出ない。Aは悩んだ。
「これは退職拒否の陰謀だ!」 エンジニアが下した決断とは

その後、Bは毎日Cチーム長に「退職したい」と訴えるが「忙しい」「チームにはお前が必要だ。考え直せ」と返答され、取り合ってもらえない。ついには退職届を提出したが、目の前で破られた。

らちが明かないので担当部長に話をしたところ、「Cチーム長を通してくれ」と追い返された。社長への直訴を試みるもほとんど不在。退職の予定がつかず、イライラしたBは、Aにグチをこぼした。

「上司たちが話を聞かないってアリか?これは退職拒否の陰謀に違いない!」

Bの嘆きを聞くうちにAはある決心をした。

「B先輩がいない会社なんて嫌だから自分も一緒に退職しよう。でも簡単に辞めるのは無理そうだし、どうしよう……」

10月上旬の休日。自宅でゴロゴロしていたAに、大学時代の友人・Dから弾んだ声で電話があった。それは会社を辞めたいと言い出してから6ヵ月間、上司との攻防の末やっと退職できたという報告だった。

「よかったね。結局上司が折れて退職を認めてくれたの?」

するとDから帰ってきたのは、意外な答えだった。

「いや、上司は引き止めるだけで話をしてもムダだから、退職代行会社に依頼したんだよ。」

「退職代行会社?何それ」

「代行会社が自分の代わりに『退職したい』意思を会社に伝えてくれるんだ」

「えっ?それで会社が退職を認めてくれるの?心配だなあ……」
「大丈夫。代行会社に依頼してから1回も会社に行かなかったけど、ちゃんと退職できたよ。」

ふとBを思い出したAは、Dが利用した代行会社の名前を教えてもらい、その後ネットでその会社の概要を調べた。

「よし、2人で辞めてやろう」 退職代行会社という選択肢

次の日の朝、AはBへのあいさつもそこそこに話を切り出した。

「俺の友達が、最近退職代行会社を使って会社を辞めたんです」

そしてCの話とネットで調べた内容を説明すると、Bは乗り気になった。

「よし!俺もDさんと同じ方法を使おう」

その様子を見たAは言った。

「僕もB先輩と一緒に退職しようと思います」

BはAの肩を叩いて喜んだ。

「あんな会社、2人で辞めちまおうぜ!ザマーミロだ!」

その夜、2人はCチーム長の残業命令を断り定時で退社、その足で居酒屋へ行き、「まずは景気づけだ!」と朝まで飲み明かした。そして翌日の夜、Dが利用した退職代行会社へ電話を入れ、詳しい説明を受けた後でサービスを申し込み、実行日は来週の月曜となった。
退職代行なんて 違法行為じゃないのか?

「『AさんとBさんが退職する』だって?どういうことですか?」

翌週月曜日の朝。退職代行会社からの電話を受けたE総務部長は、驚きのあまり大声を上げた。電話を切ると部下が「部長、どうしたんですか?」と聞いてきたので、通話の一部始終を説明した。すると「それは詐欺かイタズラ電話か?」「もしかして2人は事件に巻き込まれたのかも……」など、たちまち総務部内は大パニックになった。

慌てたE総務部長は、とにかく事の真偽を確かめようとAとBに電話やメールを入れ続けたが、繋がらない。そこでCチーム長を呼び事情を聞いた。すると、

「B君からは、1ヵ月前から再三退職希望の申し出がありました。しかし辞められては困るので保留状態でした。A君の件は初耳ですが、B君を慕っていたので道連れ退職でしょう」という返事が返ってきた。

そこで初めて、2人の退職は真実だとわかった。しかし、退職代行会社に依頼するとは前例がなく、対処方法がわからない。困ったE総務部長はF社労士に電話をかけ、「相談したいことがあるので、今日の午後、会社に来てほしい」と依頼した。

午後、やってきたF社労士にE総務部長は混乱した様子で、AとBの退職の経緯を説明した。そして、話し終えるとF社労士に尋ねた。

「2人は退職代行会社に依頼して退職を申し出たが、このサービスを使うことは法律違反でしょう?」

「退職者の意思を会社に伝達するだけなら、違法ではありません」

E総務部長は意外そうな表情を浮かべながら、質問を続けた。

「わが社の就業規則では、会社を退職する際は退職の1ヵ月前までに申し出ることと決まっています。これはどう解釈するのですか?」
「Bさんは1ヵ月前から上司に退職の意思表示を行っているので、就業規則違反には当たりません」

「じゃあAさんは?」

「Aさんは就業規則の定めには反していますが、就業規則は内規であり、退職する場合、法律では退職日の2週間前に退職を伝えればいいことになっています。だから退職は可能ですね」

「じゃあ、この対処はどうすればいいんですか?」

F社労士は逆にE総務部長に尋ねた。

もはや善後策を考えるしかない せめて業務の引き継ぎをさせるには

「会社側としては、2人にどうしてほしいのですか?」

「人手不足なので、2人とも退職しないでほしい。しかし退職代行会社を利用してまで辞めたいのなら、その意思は固いだろうな」

「そう思います」

「だったら、業務の引き継ぎをして欲しいので、2人には9月末日まで出勤してもらいたい」

「交渉は退職代行会社ではできませんので、直接2人と話し合うことになります。ただし、有休が残っていてその消化を希望する場合、出社せずに退職する可能性はあります」

「えっ?引き継ぎもしないで有休は取るだと?それは認めない!」

「しかし、有休は労働者に与えられた権利なので、引き継ぎの都合で会社が拒否することは、原則、できないんです」
「困ったな。もし2人が出社を拒否したらどうしよう」

F社労士はひとつ提案をした。

「その場合は、自宅で書ける程度の内容でもOKということにして、業務引き継ぎ書の作成を依頼するのはどうでしょうか?」

この状態だとさらに 退職する社員が出て来る

E総務部長は大きく頷いた。F社労士は続けた。

「それと、これからも2人が会社からの連絡に応じない場合は、退職代行会社を通じて退職届の提出と社員証や備品などの返却を依頼してください」

「わかりました。しかし、なぜこんなことになってしまったんでしょうか?」

「2人に対する業務過多に加え、部下の申し出をまともに取り合わない上司の態度も原因だと思われます。事情はあるでしょうが、きちんとした対応をしていれば、退職代行会社へ依頼することはなかったかも知れませんね」

「しかし、管理職も忙しくて手いっぱいの状態なんです」

「状況はわかりますが、この状態だとさらに退職する社員が出てくるでしょう。早急に社長と相談して、対策を取ることをお勧めします」

その後、E総務部長は1週間、毎日数回2人に連絡をしてみたが応答はなかった。そこで退職代行会社を通じて、「平日10日分は有休を当て、10月31日付での退職とするので退職届を提出すること。社員証やロッカーのカギなどの備品を返却すること。そして簡単な引き継ぎ書の作成を依頼したいこと」を伝えた。

3日後、2人から会社宛てに退職届と返却備品は郵送で、業務引き継ぎ書はメールで直接E総務部長の元に送られてきた。

転職先の会社で出会った 「意外な人物」とは…

退職後、Bはチーフエンジニアとして乙社に就職、Aも同時に採用された。そして入社から1ヵ月後、社内で意外な人物を見かけたAはびっくりした。

「Cチーム長じゃないですか!」

横にいたBが笑いながら言った。

「俺らが退職してからひと月も経たないうちに、「仕事が猛烈に増えてやり切れないから退職したい」って、Cさんから相談を受けたんだ。それで、自分たちが利用した退職代行会社を紹介してやったのさ」

「へえ……でも何故ここにいるの?」

「就職先がなくて困っていたから、俺が社長に口をきいてあげたんだ。自分の部下としてコキ使うためにね。ちゃんと働いてくれよ、Cさん!」

BはCの肩をポンと叩いた。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。

<参考>
*弁護士法72条/弁護士でない者が報酬を得る目的で代理や仲裁、和解などを禁止する(非弁行為の禁止)
*民法627条/当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。

出典:2019年10月15日 DIAMONDオンラインより引用  社会保険労務士 木村政美氏著

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